一日警察署長/教育的配慮が重要だ
秋の全国交通安全運動の一環として、桐生警察署は小学生3人の空手選手に、一日警察署長を委嘱し、ドライバーを街頭指導した。
写真入りで1面に報道した本紙を見て、私は落胆し複雑な気持ちになった。
昨年の歳末特別警戒として、大間々出身のお笑いコンビのアンカンミンカンに一日警察署長を委嘱し街頭活動をしたので、本年2月当欄で批判した。
警察からは何の反論もなかったので、私の批判を理解し受け入れてくれたと思っていたが、1人であるべき署長を二人同時に委嘱したので、コラムは完全に無視された結果となった。
戦後の一時期、一日駅長、一日市長、一日郵便局長、一日税務署長、一日警察署長のように、一日〇長が流行した。これらの組織に親しみを持ってもらうのが目的だろう。
しかし流行は間もなく消失し、一日警察署長だけが残り、春秋の交通安全旬間のイベントに活躍している。
初期には街の名士が一日〇長に起用されたが、次第に芸能人や学校の生徒・幼稚園児までが委嘱されるようになった。
他人に何かを頼むときは相手の立場を考慮することが大切だ。自分の都合だけを主張し、相手の事を無視してはいけないのは常識だ。相手が子供なら両親の同意も必要だろう。教育的配慮も重要だ。
警察が一日警察署長を小学生に委嘱するとき、保護者(両親)の同意は取ったのだろうが、学校や教育委員会に連絡して了承を得たのだろうか?
交通安全は重要な警察の仕事だが、警察の本来の仕事は犯人(容疑者)を逮捕したり、犯罪を未然に防ぐことだ。
一日警察署長のたすきを掛け街頭で交通安全の啓発チラシを配布することを頼めば、小学生は警察の仕事は交通安全だけだと誤解するのではなかろうか。さらに複数の児童が一日警察署長に就任すると、警察署長は複数存在すると誤解するかもしれない。
学校で学ぶ社会の内容と異なり、学校教育を混乱させる。小・中学校の義務教育は学校の授業が優先され、塾や習い事は従属的でなければならない。
警察の仕事には非行少年の指導もある。いじめの対策も一義的には学校の教師の仕事だが、生命に危険が及ぶおそれがあるときは、警察の仕事にもなるだろう。
学校と警察は協力して児童・生徒の指導に当たるべきだ。
複数の小学生に同時に一日警察署長を委嘱した今回の措置は、教育的配慮を欠いた警察の行動ではないだろうか。市民は警察を批判しにくい。批判を文書で公表するのには勇気が必要だ。反論は謙虚に聞くつもりだ。