チョンボ/なぜ気づかなかったのか
チョンボは思わずやった失敗の意で、話し言葉として広く通用しているが、本来はリーチと同様、マージャン用語である。
マージャンは囲碁や将棋と同じように室内で行う頭脳競技だが、前者が2人で争うのに対し、4人で競う。
昔は大学生のほとんどがマージャンを楽しんだが、現在は知らない人が増えたらしい。聴牌(上がれる手)していないのに、聴牌だと誤ってロンと発声して手を公開する錯和(ツオーホー)がなまってチョンボになった。
パイロットの誤操作や医師の誤診のように、生死にかかわる重大なミスはチョンボとは言わない。頭をかいて笑うような単純なミスがチョンボである。
今年は統一地方選挙が実施された。後半の市長・市議選の投・開票日の前日に、本紙の紙面に投票日の翌日の市長の予定として、当選証書付与式という記事が掲載された。
多くの読者は何の違和感もなく見過ごしたかもしれないが、当選証書付与式とは当選者が出席する式である。
公職選挙法は立候補者に公平なように、きめ細かく規定されている。市長選挙の当選者に当選証書を付与するのは、市長ではなく、民間人から選ばれた選挙管理委員長である。
受け取るのは当選者で、投・開票日現在の市長は無関係だ。何度も選挙を経験した現職市長が知らないはずはない。
秘書室の職員が何気なく書いた市長の予定のメモを、新聞社に渡したのだろう。市長秘書は1人ではなく、複数の職員が秘書室に勤務している。なぜだれもミスに気付かなかったのだろう。チェックシステムがないのかもしれない。
このミスは単に一職員の不注意ではなく、市役所が組織として気付かずに犯した大過失だ。チョンボとして看過することはできない。
掲載した新聞社にも問題がある。市長の予定記事を機械的に掲載し、内容が正しいか否かのチェックをしないのだろう。
現職市長が当選し、結果としては実害がなかったが、極めて遺憾なことだ。
話は変わるが、学校給食中央共同調理場で調理した学校給食の中に、使用した包丁の一部が混入したおそれがあるとして、配食した副食を食べないように各校に通知し、副食を
廃棄したとの報道があった。後日その分を副食として追加した。
児童が給食を食べたとき、異物として発見されたのではなく、配食した直後に包丁を点検して刃がこぼれていることに気付き、各校に緊急連絡したとのことだ。
平素から給食提供者として器具の点検を怠らず、実に立派な行動だ。同じ市職員として、秘書室員とは雲泥の差だ。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)