けじめ/見分けはむずかしい
けじめは源氏物語に頻出する古くからの大和言葉であるが、現在は日常ほとんど使われないので、やくざ言葉だと思っている人がいる。
新明解国語辞典は小形の辞書だが、けじめを適切に詳しく解説しているので引用する。
[もと、他との比較から帰結される、大小・多少や優劣などの差の意]
①そこまでが一方に属し、そこから先は他方に属するという区分。「肉がすっかり溶けて、汁とのー[=区別]がつかなくなった。/一旦遊里に身を置けば、大名町人のー[=差別]は無い」
②その場その場において取るべき、折り目正しい行動の枠。「公私の―を付ける[=公私の別をわきまえ、それにふさわしい行動を取る]」
けじめをつける
①[やくざ社会で]失敗や利敵行為に対する懲罰を明白な形で行う。
②非行に対して、責任を取る。
おれおれ詐欺や振り込め詐欺は、公的機関を騙って、老人をだますことがある。話し方がうまく、複数の犯人がそれぞれの役割を演じる劇場型の詐欺もある。子や孫を助けたい一心で老人はだまされやすい。
社会の仕組みを熟知し、冷静に対応しなければ、にせ情報を見分けることはむずかしい。警察や自治体は日頃から正確な情報を提供し、まぎらわしい行為は厳禁だ。
被害に遭わぬよう注意のはがきを、一人暮らしの老人に発送したつもりの警察は、受取人の名を記さず地域限定制度を利用した。郵便局は居住者の年齢を把握していないので、一人暮らしの老人と指定されても配達は不可能だ。それを知らない警察も不注意だが、不可能なものを可能のような顔をして引き受ける郵便局は悪質だ。日本郵便は現在は民間会社だが、数年前までは国営事業だったのだ。
本来は市役所の仕事だが、民間に委託している事業もある。それに従事している人が、市職員のような態度で仕事をするのも問題だ。身分を正確に名乗れば相手に理解されにくく、市役所を名乗った方が、仕事の能率は上がるだろう。
しかし、このような慣行が振り込め詐欺の土壌となり、犯行を助長している面もある。
災害時にはデマや誤った情報が流れやすい。市が正確な情報を市民に伝達することは極めて重要である。緊急を要する避難勧告や命令を、瞬時に住民が正否を判断するのは不可能だろう。日頃からの訓練が必要だ。
隣組の回覧板には官公庁や各種団体からのお知らせがとじられている。これを短時間に読んで隣家へ回す。市役所と記さず無記名で回覧するのは混乱を招く。官公庁も市民も、日常生活でけじめを付けることが大切だ