踏切の警報機/「事前」はむずかしい
車が通行可能な踏切には、現在はほとんど警報機と遮断機が設置されている。車や歩行者と列車との接触事故を防止するためだ。歩行者のなかには、目の見えない人や耳の聞こえない人もいる。
列車が踏切を通過するときは、①警報機が鳴り始め、赤灯が点滅する②遮断機の手前の棒が下がり、その後向こう側の棒が下りる③列車が踏切を通過する④警報音がやみ、遮断機が上がる。⑤車や歩行者が踏切を渡るーの順となる。
私は上毛電気鉄道の109号踏切(丸山下駅のホームそばの踏切から西桐生駅寄りの次の踏切)から直線100㍍ぐらいの所に住んでいる。窓を開けていれば屋内にいても、列車の通過音や踏切の警報音は聞こえる。近所を散歩しているとき、列車が近づいていて、踏切の遮断機が下り赤灯が点滅しているのに、警報機が鳴っていないのに気付いた。
警報機の故障だと思って西桐生駅へ電話で通報した。駅員は保全係へ連絡するといい、私にありがとうと礼をいったが、氏名や電話番号は聞かれなかった。
数日後、警報機は正しく作動しているか否か確認に行った。上り・下りの列車で多少の差はあるが、遮断機が下りると、警報音が小さくなるのに気付いた。先日の件は、警報機が無音なのではなくて、音が小さくなって私には聞こえなかったのだ。
遮断機の前で通過待ちの運転手は、窓を閉めてラジオを聞いていたら、警報音は聞こえないだろう。
上電本社に電話して、列車の通過前に警報音を小さくする理由を質問した。本社の鉄道部長は「警報音が大きすぎてうるさいという苦情もあるので、遮断機が下りた後は音を小さく絞っている。音が小さすぎるなら、一目盛大きく調整する」と回答した。
私は「109号踏切について苦情があったのか、何目盛あるのか」と聞き返した。
鉄道部長は「当該踏切について具体的な苦情はなく、一般論だ」という。
騒音がなく静かな環境が暮らしやすい。しかし音の種類や音量によっては、かえって懐かしかったり、気が休まることもある。
最近開発された車は、エンジン音が無音で後方からの車に歩行者は気付かず、危険だという意見さえある。その場に適当な音質・音量は千差万別だ。
先日の山火事で大活躍したヘリコプターの飛行音は、かなりうるさかったが、苦情はなく、自衛隊や防災関係者に市民は感謝している。
事故が起こってから原因を追求し、責任を追及するのは比較的やさしいが、事前に問題点を指摘し、改善してもらうのはかなりむずかしい。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)