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桐生タイムスより

金持ち/定義がむずかしい

 税金は貧乏人から取らず、金持ちから取ってくれという議論を巷間聞くことが多いが、現実は、貧富の差なく一律税率の消費税のように、大衆課税となり国民を苦しめている。
理由は計算が楽で取りやすいからだ。金持ちを字義どおりに解釈すれば金を持っている人、すなわち預金や固定資産を多く所有している人だが、所得の多い人も金持ちだろう。
この両者は一致するとはかぎらない。所得税は直接税の国税で、所得の多い人ほど税率が高くなる累進課税だが、現在話題になっている消費税は、代表的な間接税の国税だ。
直接税は税を負担する人と納税者とが同一だが、間接税は税を負担する人と納税者とが一致しない。
消費税は税を負担するのは消費者だが、納税するのは商店などの販売者である。価格に税金が含まれていることが多く、納税者の負担感が軽いとされる。
市税の国民健康保険税は所得割のほかに資産割も加算され、後者が税金の二重取りとの指摘もあり、桐生市は来年度から再検討するとのことだ。
これに対し、保険者によって多少の差はあるが、健康保険料は所得によって額が決まり、資産や家族数は保険料に影響しない。
要約すれば、国は高所得者を金持ちと定義し、地方公共団体は資産家を金持ちと考えている。また受益者負担の考えから被保険者数に応じた人頭割も加算する。
ではなぜ国と市町村で考え方の基本が相違するのだろう。国は税務署を通じ各人の所得を把握しているが、資産状況は知らない。
市町村は各人の所得を税務署を通じ、間接的に把握しているが、資産に対しては固定資産税を課税しているので資産内容を知っている。しかし預金高は両者とも把握していない。
大都市は国民健康保険料だが、群馬県内の市町村は国民健康保険税だ。料でも税でも実質的には同一だが、税といったほうが強制力が増し、徴収が楽だという説がある。
国民所得に対する租税の総額の率を、かつて租税負担率といったが、国際比較をするために、租税と社会保険料との合計が国民所得に占める割合を国民負担率と称し、現在では後者によって政策を論じている。
漢字が多く、むずかしい解説になったが、金持ちの定義も意外にむずかしい。
国は所得の多い人を金持ちと定め、市町村は資産の多い人を金持ちだとして課税しているが、結局は公平に課税するためには自己の把握している資料に基づいて行うことになる。
換言すれば取りやすい対象から取ることになる。
腹が立った人は、消費税の税率が10%、8、5、3と減税になったときを想像してみよう。

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