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桐生タイムスより

招集と召集 異常と以上

混同されやすい

招集と召集はどちらも「ショウシュウ」と読み、文字は手偏の有無の違いだけでよく似ているので混同されることが多い。しかし前者は招き集める意で、招く方と招かれる方とに身分の差はないが、後者は召し集める、すなわち上位者が下位者に命令することだ。

自衛隊や警察・消防は召集の感じがするが、現在の用法では招集である。
国会を開く召集、旧軍隊の召集(令状)だけが召集で、それ以外は株主総会をはじめ、県議会も市議会もすべて招集だ。

国会の召集は憲法で定められた天皇の国事行為で、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるので国会を召集する。これに対し、地方議会は首長も議員も住民の選挙で選ばれ、どちらが上位かは問わないので、同格の招集である。

その他の会議も「集まれ」と命令するのではなく、「集まってください」と要請するので、召集ではなく招集と表記する。どちらを記すのか不明の場合は招集と記すのが無難だ。

医師法19条の(1)は次のように規定している。
診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

医師法は戦前に制定された古い法律で、条文に見出しはない。この義務は現在「診療義務」と正しく表現されているが、昔は「応召義務」と誤った表示をする解説書があった。

患者は医師に「診察しろ」と命令や強要するのではなく「診てください」と要請するのだから、当然「応招義務」でなければならない。言葉に無関心な人が応召義務と表記し、多くの医師が苦情を訴えず黙認していたのだろう。

また、医師法21条は「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と定めている。

この条文の異状を異常と誤解したり、両者の異同を知らずに議論をする人がいる。異常は正常の反対語の一般用語で広く用いられている。医学的には病理学上の異常で、ほとんどの人は病気で死に、正常な状態で死を迎える自然死はきわめて少ない。病死も自然死に含まれるとする誤解もあるようだが、人には寿命があり、永遠に生き続ける人はいない。

病院で亡くなった人の死亡診断書には、ほとんどの場合病名が記されており「老衰」と記されるのは現在では少ない。これに対し異状の反対語は日常で、法医学上の異状で専門語の一種だ。死体に異状があれば警察に届け出なければならない。

(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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