仏作って魂入れず/税金の使い方
東武新桐生駅前の公衆トイレが改築されたので、早速点検に出かけた。桐生市によると年間4万4377人が使用したとのことだ。
昨年改築された上電西桐生駅前の公衆トイレは女性用だけに全身がうつる豪華な鏡がつけられたが、今回の東武新桐生駅前のトイレには男女両方とも幅半分ほどの全身用鏡が設置されている。
私が点検したのは、偶然清掃直後だったようだ。床を水で洗ったままなので、一面ぬれていて雪解け道のようだ。そこへ土足の靴の利用者が使用するので、靴の底の泥が床にとけ、掃除後にかえって床が汚れている。
男性用は靴の底が大きいので大きな跡がつき女性用はハイヒールなのか小さな跡だ。
犯罪捜査の刑事のように足跡を観察した。
翌日清掃事務所に清掃の実態を問い合わせた。毎日午前と午後に1回ずつ清掃しているとのことだ。しかし、水を流して清掃した後に乾いたモップで床を拭けとまでは指示していないらしい。市職員は清掃状況を一度も点検していないという。
利用者の立場を全く考慮せず、仏作って魂入れず式の発注だ。
40年ほど昔、東京の経団連会館での医学講演会を思い出した。定員500人ほどの会場の後部の席で講演を聞いた。休憩時間に最先にトイレに駆け込んだが、極めて清潔だった。大勢の人が使用するので、床がすぐ水でぬれる。次の休み時間にも一番にトイレに行ったが、床面には水は一滴もなく、雑巾で拭い去ったのか乾燥している。つまり1時間ごとに何回も掃除している。
さすがに経団連会館だと感心した。講演の内容はすっかり忘れたが、トイレの清潔さだけは40年後も強く印象に残っている。
話は変わるが、県道赤岩線の宮前町一丁目堤町二丁目の変則交差点の拡幅工事や、重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の電線地中埋設工事で、地元住民の了解が得られず、群馬県や桐生市の土木担当職員は困っているようだ。
他地域の市民は地元住民のエゴだと思うかもしれないが、地元住民は日常生活に多大な影響を与える工事を、多額な費用を使って着工するのは税金の無駄遣いだと考える人もいる。
事前の説明不足というか、公共事業はせっかく予算がついたのだから、やらなければ損をするという予算万能主義で施工し、表題のように「仏作って魂入れず」になりがちだ。
役人の保身術だと思う人や、着工すれば訴訟も辞さないと強く反対する人もいる。
県道工事の主体は県土木出張所、そのもとは国土交通省、重伝建は文化庁、すなわち文部科学省と所管が分かれているので、調整は容易ではない。重伝建指定の際に、デメリットも地元住民に十分説明されたのだろうか。