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桐生タイムスより

地獄の沙汰も金次第/若者よ、投票しよう

 動物とヒトとの差を挙げよといわれたら、ヒトは手と足を使い分ける、ヒトは火を使う、ヒトは道具を使う、などを挙げるだろう。
 金を使うも区別の一つかもしれない。
 太古、人類が発生したときは世の中には貨幣はなかった。最初の貨幣は貝だといわれ、貢・財・貨・貧・買など貝のつく漢字が多い。
 物々交換がなければ、衣食住のすべてを自分で賄わなければならず、不便だっただろう。
 仕事が分業化され、貨幣が発明されると、日常の生活は飛躍的に便利になった。しかし金銭が過度に尊重されている現在は、すべての行為が金額で表示され、命や心の領域までに金銭が割り込んできて、味気ない気がする。
 保険制度が普及し、生命保険や損害保険・医療保険など世の中全て保険で、金さえ払えばよいだろうという考え方が支配している。
 しかし、いくら多額の保険に加入しても、命を保障してくれるわけではない。日本の健康保険のような医療保険は、医療そのものを保障する現物給付で、世界に冠たる保険制度だ。
 一方、世の中最終的には金で解決するのも現実だ。従って、表題のように「地獄の沙汰も金次第」という諺が生まれる。人が死んだあと、地獄に落ちるか極楽に行けるかの裁きも金次第で決まるという贈収賄を公認するような格言だ。地獄の閻魔大王も金の誘惑には勝てないのだろう。
 現役時代には金の亡者でも、年を取ると命の大切さ、健康のありがたさが分かる。病気になって初めて健康とは何かを自覚する。配偶者や家族も同様で、別居したり死亡してから大切さに気付くことがある。
 人間以外の動物でもそんな気持ちになることがあるのだろうか。
 金が無くて生活苦が続くのは困るが、あり過ぎて相続税の心配をしたり、相続が争族になるのも大変だ。
 程よく貧乏で、年を取っても働く職場があり、周囲の人の親切を受けて感謝しながら暮らすのが幸せだろう。
 使い切れないほど無限に資産があれば、買い物の楽しみがなくなる。買いたいのを我慢して、数ヵ月間貯金してやっと購入できれば、買い物の喜びは倍増する。
 現在の社会保障は高齢者に厚く、こどもに薄いといわれている。その原因は選挙制度にある。高齢者には年齢制限はないが、未成年者は選挙権がなかった。今年の夏の参議院議員の選挙から選挙権が18歳以上に引き下げられるが、投票率が低いのではと懸念されている。
 老人が優遇されているのは老人の投票率が高く、声が届きやすいからだ。若者優遇を望むのなら、みんなそろって投票しよう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 
 

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