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桐生タイムスより

春/定義の違い

 日本には春夏秋冬の四季があり、国民の考え方・生活・経済に影響を与えている。現在の暦では、1年は冬の1月から始まるが、春夏秋冬の順に並べる。
 辞書では春は詳しく解説されているが、夏・秋・冬の説明は簡単だ。色を季節に配すると、青春・朱夏・白秋・黒冬となるが、現在も日常語として使用されているのは青春だけで、黒冬は辞書にも立項されていない。青春や朱夏は感覚的にも理解できるが、白秋や黒冬は、なぜ白が秋で、黒が冬なのか理解に苦しむ。秋の黄(紅)葉、冬の雪景色を模して黄秋・白冬なら感覚と一致する。
 いつからいつまでが春かとふと疑問に思った。分野によって春の定義が違う。
 文学では立春から立夏の前日までを春というが、気象学的には太陽暦の3月・4月・5月を春と称し、多くの人はそれに従っている。しかし昔の太陰暦では1月・2月・3月が春だった。現在でも年賀状に「初春」と記すのはその名残だ。天文学的には春分から夏至の前日までが春だ。
 青春は20歳前後の、希望と不安に満ちた時代で、老人はそれを懐かしく思うことがある。日本語では晴天を青い空、広い海を青い海と表現し、前向きにとらえることが多いが、英語のブルーには憂鬱という意味もある。
 青といえば、昔、交通信号の色が青か緑か大問題になった。道路交通法では信号の色は青・黄・赤と規定されているが、色彩学的には当時の青信号は緑に近かった。はるか昔は緑を青と表現した時代もあったらしいが、教育界から青信号に異論が起こり、「みどり」と表記した教科書も出現した。
 学校の近くで、旗を用いて道路を横断する児童を助ける女性を「緑のおばさん」と呼んだのはその名残かもしれない。LEDに変わり、本来の青になった。
 春は英語ではスプリングだが、スプリングには泉やばねの意味がある。はねるが共通しているので語源は同じなのだろうか。
 それはともかく、春は生命力が躍動している。しかしポカポカと暖かくなると眠くなることがある。誰もが春を待ちこがれているのかと思ったが、なかには春が嫌いだという人もいる。
 花粉症に悩む人たちだ。昔は花粉症という病気はなかったのに、最近は花粉症の人が増えてきた。杉を植えたのが原因とされるが舗装道路の影響だを主張する人もいる。
 いずれにしても、アレルギー体質の人が増加したのだろう。アレルギーの概念が医学に導入されたのは戦後だが、日本アレルギー学会が設立された当時のシンボルマークは象だった。群盲像をなでるの諺のように、全体像をつかむのは困難という認識だった。

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