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桐生タイムスより

ダブルスタンダード/実績主義と発生主義

 所得税の確定申告は15日が期限だ。確定申告は前年1月1日から12月31日までの1年間の収入と必要経費から所得を計算し、税額まで算出する申告納税制度だ。
 多くのサラリーマンは、給与の支払者である事業主(会社)が個人に代わって申告し納税してくれるので、納税に無関心な人が多い。年末調整の結果を記した源泉徴収票を一見するだけの人もいる。
 毎月の給与は25日締めの月末払いのような会社もあるが、月末締めの翌月5日払いの会社もある。後者の場合、平成27年12月分の給与は27年の所得か、28年の所得が事前に決めておかなければならない。
 所得税法では実際に支払われた日の属する年の所得と決められている。実績主義だ。
 商店の場合を考えてみよう。商品を販売した場合、スーパーやコンビニのように、商品の引き渡しと代金の支払いが同時のこともあるが、1ヶ月分の代金を翌月請求し支払いを受ける取引もある。給与と同じように考えれば、実際に代金の支払いを受けた日の属する年の収入に算入するはずだが、税法では支払いを受ける権利の発生する日、つまり商品を引き渡した日の収入として計算することになっている。発生主義だ。
 なぜ同一基準ではなく、実績主義と発生主義のダブルスタンダードになっているのか、説明がなく不明だ。
 長期間事業を継続していれば、どちらでも同じように思えるが、開始年と廃止年では大きな差が生じる。
 スポーツで考えてみよう。野球で打者が一塁に到達したのと、一塁手が捕球したのとが同時の場合、セーフかアウトか事前にルールを決めておかなければならない。自分が攻め方のときはセーフ、守備方のときはアウトと主張する監督は退場を命じられるだろう。
 テニスで球が線上に落ちたときはインかアウトかも同様で、自分が打ったときはイン、相手が打った球はアウトと主張すれば、選手は参加を拒否されるだろう。
 事前にルールを決めるときは、どちらでも決められるが、いったん決まればそれに従わなければスポーツは成立しない。
 ダブルスタンダードは直訳すれば二重基準の意味だが、二枚舌と解説している辞書もある。
 所得税法における実績主義と発生主義は、国が有利なように定めたのではなかろうか。
 ダブルスタンダードの典型は年齢計算だ。誕生日に加齢するのが常識だが、法律上は誕生日の前日に加齢することになっている。
 数年前、未成年者と老人に定額給付金が支給されたが、20歳は誕生日に、65歳は誕生日前日に加齢する計算だった。国民は自分に不利でなければ黙っていた。

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