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桐生タイムスより

手本/模範を要請される職業

 手本には書写(習字)のように、模範とする文字を書いた本という意味があるが、言動の模範となる人の行いの意味もある。仕事により手本を要請される職業もある。
 警察のパトカーは運転者の手本とされることが多いので、パトカーを運転する警察官は常に緊張し、ストレスがたまることだろう。
 信号のある交差点を通過するするときは、渋滞していればたとえ青であっても交差点内に侵入してはいけないことは知っていても、現実は右折車が数台交差点内で対向車の途切れるのを待っているのは、よく見掛ける光景だ。
 現在は信号が切り替わるとき、4方向全赤になる交差点が多いから、一瞬交差点内の車が無くなるように信号機が調整されている。
 右折のため交差点内に入った車が渋滞のため青や黄の時間内に右折できず、赤になってから右折するのをしばしば見かけるが、全赤時間内のため実害はほとんどない。
 ある変則交差点で、青信号で交差点内に進入して右折しようとしたパトカーが、渋滞のため右折できず、交差点内に取り残されてしまった。信号が黄から赤に変わった。パトカーの停車位置は横断歩道の真上だ。
 この場合、ほとんどの車は信号が赤に変わっても、注意しながら前進して交差点外に出るだろう。
 私が助手席に乗った車は、すぐ前のパトカーがバックするかもしれないと予想して、パトカーから10㍍も離して停車し、観察した。
 横断歩道は理論的には交差点外だが、実務としては交差点内と解釈されることがある。横断歩道は駐停車禁止である。そのときは歩行者がいなかったから実害はなかったが、もし歩行者が横断歩道を横断しようとしたら、あのパトカーは前進しただろうか、後退しただろうか。
 自分がパトカーを運転していたと仮定して考えてみよう。他のドライバーの模範となるよう日頃から法令順守しているので、赤信号で交差点から前方脱出せず、理論的には交差点外である場所で停車した。しかしその地点は駐停車禁止の横断歩道だ。後続車との車両間隔は十分あるので、バックするのが正しいのではなかろうか。
 助手席には同僚の警察官が同乗しているので、降車して誘導してもらうこともあるだろう。そうすれば私は満点をつける。
 信号のある交差点で、私は信号に従って横断歩道を歩行者として渡っていた。交差する道路には信号待ちのパトカーが先頭に駐車していた。私がパトカーの真ん前に来たとき、パトカーは急にサイレンを鳴らして赤信号で発車した。私は驚いて転倒しそうになった。
 100㍍ほど先に停車していたパトカーの警察官に尋ねたら、違反車両を追跡したとのことで、私は納得した。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 

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