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桐生タイムスより

マイナンバー/あなたの番号

 マイナンバー(個人番号)通知カードの郵送が予定通りにはならず、遅れている地方もあるようだが、このコラムが掲載される頃には、日本全国津々浦々、全国民に配達されているだろう。
 マイナンバーは私の番号の意味だが、本質はユアナンバー(あなたの番号)だ。各人が自分の好きな番号を選ぶのではなく、行政が個人の意志とは無関係に一方的につける。同一世帯に属する家族でも、続き番号ではなく、飛び離れた全く異なる番号だ。番号で個人が特定され、同一番号を異なる人にはつけないので、12桁の数字だ。とても覚えきれない。
 通知カードは受け取り拒否できるが、番号そのものは拒否できず、行政に支障は生じない。番号をつけられないためには、死亡するか、国外に永久的に移住するしかない。日本国内に住んでいるかぎり、どこに住んでも番号はつけられる。
 この制度は社会保障・税・災害対策のためと説明されているが、歴史的には税を取りはぐれないために考案されたのだろう。
 戦後の混乱期には、文化住宅・文化包丁のように何にでも文化を付した。混乱が治まり経済が発展した時期にはマイカーやマイホームのようにマイをつけるのが流行した。戦時中の「お国のため」に対して「マイ」は個人主義・民主主義の旗印となった。
 その後、税金の徴収漏れをなくすため、各人に番号を付しグリーンカードを交付する案が浮上し、実施寸前までいったが、国民各層の反対が強くて実現できず、国税庁は無念の涙をのんだ。
 所得税の確定申告に青色申告制度がある。晴れは日に青と記し、青空、青い山脈・信号の青のように日本人は青を好む。しかし英語のブルーは青いの他に憂鬱(ゆううつ)なの意味があり、さらにブルーフィルム(わいせつ映画)のように、英語のブルーは日本人の青とは感覚が異なる。JR(旧国鉄)のグリーン車のように青よりグリーンのほうが、人々に好まれるので、グリーンカードと名付けたのだろうが、失敗に終わった。
 マイナンバー通知カードは身分証明としては使用できず、各人が申請して後日交付される顔写真付きの個人番号カードが身分証明になるそうだ。
 マイナンバーは今後いろいろな方面に利用されることになる。そのためには法令の整備が必要だが、個人情報の宝庫となる。その基となるマイナンバーカードを持ち歩くのは、全財産を持って外出するような話だ。
 年金・健康保険・介護保険の他、官公庁への届け出等に利用され、便利になるかもしれないが、丸裸で外出するような羽目になるおそれもある。運用は慎重に願いたい
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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