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桐生タイムスより

褻にも晴れにも/いろいろな意味

晴れの反対語を聞かれると、多くの人は雨と答えるだろう。しかし曇りと答える人もいるかもしれない。日と青天なら晴、雲の上に日があり見えなければ曇、一度聞けば理解できる漢字だ。
 晴れには気象用語の他にいろいろな意味がある。広辞苑には次の七つの意味が記されている。
①空のはれること。ひより。晴天。②日のあたる所。ひなた。③ひろびろとはれやかな所。④はれがましいこと。⑤表向き。正式。おおやけ。公衆の前。ひとなか。⑥晴れ着。またそれを着たさま。⑦疑いが消えること。「晴れの身となる」
 褻(け)は17画の漢字で、⑤の意味の逆の言葉だ。神の祭りや公の政など儀式や祝いごとを晴(はれ)というのに対して日常的な私ごとをいう。正式でないこと。よそいきでないこと。またそのような状態の時や所。ふだん。常(つね)と辞書に解説されている。
 読者の中には、褻は初めて見る漢字で、聞くのも初めてだという人もいるだろう。私自身褻を書くのは初めてで、拡大鏡で辞書を見て、17画を漢和辞典で確認して手書きしている。
 表題の「褻にも晴れにも」は①平常にも特別の時にも。ふだんにも表立った時にも。いつでも。②よいにも悪いにも。あとにもさきにも。一つきりの様子にいう。の意味だ。
 広辞苑の⑤の意味の時は、最近では「ハレ」「ケ」とカタカナで書くことがある。褻がむずかしすぎるからだろう。
 「褻にも晴れにも唯一枚」ということわざがある。ふだんも特別の時も、着るものは一枚きりしか無い。着たきりすずめの意だ。
 幼時には七五三や入学式、大人になれば成人式や結婚式など、晴れ着を着て晴れの舞台に臨むが、老人にはそんな舞台はない。ごく一部の人にはノーベル賞や文化勲章授賞式の晴れの舞台がある。高齢者にも晴れの舞台を提供しているのが叙勲だ。勲〇等や勲記が廃止されても叙勲という用語が残り、常用漢字にもなっている。
 死者には死者用の衣類があるが、晴れ着とはいわないし、葬儀が晴れの舞台とは誰も思わない。
 冠婚葬祭のうち、成人式や結婚式は晴れの舞台となるが、葬式や祖先の祭事・法事は晴れとはいわない。しかし日常の褻ではない。
 休日のことを今でも日曜祭日と表現する人がいるが、正しくは日曜祝日だ。祭日のような宗教上の行事は政治と宗教とを分離した憲法の規定により、行政が祭日を規定することはできない。

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