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桐生タイムスより

広域消防/重ね書く

 桐生競艇場の競技棟選手用門近くの交差点付近の歩道上に「火の用心」と記された赤い箱が設置されている。消火器具のホースを格納した箱で「笠懸村」と表記されていた。
 笠懸村は1990(平成2)年に笠懸町となり、2005(平成17)年に大間々町・東村と合併して「みどり市」になった。
 少なくとも25年以上昔、おそらく昭和の時代に笠懸村が設置したのだろう。
 そこを通行するたびに笠懸村が気になり、設置以来点検したことがないのだろうと想像して消防署に問い合わせた。
 みどり市には独自の消防署は無く、消防業務を桐生市に委託しているので、桐生みどり消防署という。場所を告げるとすぐ現地に赴き、備え付きの台帳も確認して回答してくれた。
 消防署の説明では、笠懸村の時代には箱のそばに消火栓があり、ホースの格納箱を設置したが、その後消火栓を移動し、消防車には長いホースを積載しているので現在は使用しておらず、消防署の台帳にも載っていない。みどり市役所の消防担当者に連絡したと担当者の名字まで教えてくれた。
 数時間後、その担当者から電話があった。村時代に村が費用を負担して格納箱を設置したが、管理は地元の消防団に委任している。書き換えるよう消防団に頼んだとのことだ。
 数日後そこを通ったので箱の表示を見たが、笠懸の文字は読めるが、次が村だか町だか分からない。車から降りて確認すると、村の上に町を重ね書きして、見たこともない奇妙な字だ。
 以下は私の想像だ。消防団は市から書き直せと要請されたが、元の村を消して町に直せとは言われなかった。費用をくれないので、手軽に村の上に町と重ね書きしたのだろう。
 競艇ファンの立場から考えてみよう。桐生競艇場は北限で、東北地方にも北海道にも競艇場はない。全国から競艇ファンが集まる。
 桐生競艇というが、主催者はみどり市だ。レースが行われる阿左美沼もみどり市だ。なぜ桐生競艇というのだろう。堀の外だが、消火ホースの格納箱には笠懸町と読めない文字が記されている。どうなっているのだろう。
 競艇は、選手が八百長しない、主催者は払い戻し金を正確に計算する。裏取引をしないなど信頼に基づいて成立している競争だ。少しでも疑念があると客は来なくなる。
 重ね書きで読めないような文字を記した消火器具箱を見たファンはどういう感想を抱くだろうか。
 「村八分」という江戸の風習を表した言葉がある。残りの二分は消防と葬式だ。この二つは長い伝統があり、消防団はボランティアとして活動しているのかもしれないが、市はもっと指導力を発揮してもらいたい。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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