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桐生タイムスより

ださいとやばい/語源について

 言葉は時代とともに変化し、意味が逆転したり両方の意に使われることがある。
 「結構」は結構な品のように本来はほめ言葉だが、もう結構ですのように拒絶の意味に使われることがある。商品の売り込み電話に「結構です」と答えると、本人は断ったつもりでも、相手はほめて承諾したと主張して、代金を請求され、トラブルになる。
 「情けは人の為ならず」ということわざは本来は人のためではなく、回り回って自分の利益になるという意味だが、最近は安易に情けをかけるのは当人のためにならないと逆の意味にとる人が増えてきた。
 高齢者は使わないが、「ださい」や「やばい」という言葉が流行している。辞書に語源は示されていない。
 ださいは野暮ったい、洗練されていないの意を示す俗語だが数十年前の新聞の解説記事を思い出した。
 戦後の経済復興で団地が東京都の周辺の千葉県や埼玉県にも建設され、両県は人口が増加し、経済が発展した。都民は嫉妬や揶揄の意を込めて千葉県民を「いもい」埼玉県民を「ださい」と表現した。
 「サイタマダサイタマダ」と主張する埼玉県民を表す言葉らしい。埼玉県民が語源を知れば激怒するだろう。
 話は変わるが、洋酒メーカーのサントリーは創業者の一人鳥井信治郎さんが「トリイサントリイサン」と呼ばれるのをヒントにして、社名を寿屋からサントリーに変えたとのことだ。ダサイもそれにならったのだろう。
 やばいは不都合や危険を表すときに使うが、最近はすてきの意のほめ言葉としても使われるようだ。やばいもださいと同様語源は示されていない。「い」は美しい・寒い・強いなどと同様形容詞の語尾だ。
 やば(矢場)は矢を射る所、楊弓場だ。昔、神社の祭りや温泉地などの観光地に射的場があった。江戸時代にも弓で矢を射る遊技場があったのだろう。
 明治になって、楊弓場(矢場)で美女を店頭において客引きし、実は売春させていたのが発覚して取り締まりが厳しくなり、廃絶したとのことだ。
 悪事が露見して逮捕されるのは困る。矢場のように摘発されては具合が悪い。それでやばいという表現が生まれたのではないだろうか。
 犯罪者の隠語が広く一般に使用されると、意味が拡大反転して「すごい」「うれしい」などにも使われるようになった。どちらの意味かはその場の雰囲気により分かる。
 俗語や隠語は下品な感じで、公文書には使われない。ネタはたねの倒語だが、記事の材料や盗作などの証拠の意味でも用いられる。
 すし屋の材料からの転用だろう。コラムのねた切れにならぬよう努力しよう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 

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