総合戦略推進委員会/用語は慎重に、結論は急がずに
本誌の報道によると、桐生市は先日委員24人からなる「桐生市総合戦略推進委員会」を発足させ、初会合を開いたとのことだ。各委員から「他自治体と同じことをやっても仕方ない。桐生市しかできないことをすべきだ」などの活発な意見が述べられたが、「戦略」という言葉に苦言を呈した委員はいなかった。
戦略や戦術は軍事用語だ。憲法で平和を唱え、戦争放棄を誓った日本で、戦略推進を計る委員会を自治体が設置することに違和感がないのは不思議だ。
戦略は参謀本部がたてた広範な作戦計画であり、戦術は前線部隊の戦闘実行上の方策で、戦略に従属する。基本方針や人口減少防止対策など別の言葉を使用せず、好戦的な戦略という用語を使用した真意は何なのだろう。
終戦後、戦や敵などの用語は一時消滅していた。スポーツの分野でさえ、決勝戦とは言わず決勝が定着している。ゲームでも敵ではなく相手という。
昭和40年代交通事故が多発した頃、ある新聞が交通戦争と表現した。その影響か、販売戦略や企業戦略など、他の分野でも使用され始めた。
その前に、警察予備隊が新設され、保安隊・自衛隊と名称を変更した当時、再軍備と騒がれた。交通戦争はその後に生まれた。
戦後70年の今年、首相談話が話題になったが、侵略や従軍慰安婦なと言葉に敏感な国民も多い。中国や韓国など、当事者となった国はさらに用語にこだわり外交問題に発展する。
今では死語となった戦時中の標語の八紘一宇や東洋平和も、本来の意味は「みんな仲良く」で問題はなかったはずだ。しかしその言葉の裏に潜んだ思想が批判されたのだ。
忠君愛国や教育勅語も軍閥と関係づけられ廃止された。
戦争を始めるとき、侵略戦争だと宣言して開戦する国はない。敵が攻めてきたので、やむをえず応戦し、自衛のための聖戦だと説明する。自国民は説得できても、国際世論は納得しない。満州事変が「勃発」という何気ない用語を考えるとよく理解できる。
人口減少は不可避らしい。どの自治体も対策を真剣に考えているが妙案はないようだ。この際、発想を転換して、人口減少しても困らないように政策を考えたらどうだろう。
桐生市は錚々たるメンバーを委員に選んだのだから、衆知を集めて市の将来を見据え、結論を急がず基本方針を策定してもらいたい。
総合戦略は国の方針かもしれないが戦略を練るためには敵が必要だ。人口減少の敵は誰だろう。結婚しない若い男女や子どもを産みたがらない夫婦が敵なのだろうか。
敵を見誤るようでは戦略はたてられず、敗戦は目に見えている。
用語は慎重に検討の上使用すべきだ。