合計特殊出生率/母の年齢計算
人口問題を論ずるとき、最初に話題になるのは合計特殊出生率だ。この用語には一人の女性が一生に産む子どもの平均数とされるという注釈がつけられることが多い。
用語の意味や計算法を知っている人は少ないようだ。なぜ「とされている」と表現されているのかを正確に理解している人は、さらに少ない。
昔は出生率は人口1000人当たり1年間に何人子どもが生まれるかで示していた。千分率(パーミル・‰)だが、百分率(パーセント・%)と誤解する人がいた。
人口1000人当たりの出生数を示されても、多いのか少ないのか分かりづらい。もっと身近で分かりやすい指数はないかと考えられたのが特殊出生率だ。
1人の女性が生涯に産む子どもの数が判明すれば分かりやすい。しかし過去に産んだ子どもの数は判明しても、将来生まれる子どもの数は誰にもわからない。
そこで考え出されたのが合計特殊出生率だ。例えば25歳の女性の総数は分かっている。
子供が生まれると出生届が提出され、届けには母の生年月日が記されているから、母の年齢は計算できる。25歳の女性の総数を分母に出生した子どもの数を分子にすると出生率は計算できる。各年齢ごとの出生率を合計したものが合計特殊出生率だ。
出生率の計算には死産は含まれない。出産する年齢には適齢期がある。1歳の幼児や100歳の高齢者が出産することはない。現在は15歳以上45歳未満の女性を対象に計算する。それ以外の年齢の女性が出産することもあるが、極めて少数で無視しても統計上ほとんど影響しないと考えられている。
例えば厚生労働省の資料では、2013年の年間出生総数102万9816人中、母の年齢が15歳未満の出生数は51、45歳以上の出生数は1116、である。従って対象外の出生は総出生数の0.113%余りとなり、統計上切り捨てられている。
この15歳以上45歳未満の出生率の合計を女性が生涯に産む子どもの数と考えて、合計特殊出生率として発表している。すなわち個々の女性が生涯に産む子どもの数を実際に調べたのではなく、母の年齢別の出生率から計算した数値を生涯産む子どもの数と推計したから「一人の女性が一生に産む子どもの平均数とされる」と注釈をつけたのだ。
最近では注釈なしで、合計特殊出生率を単に出生率としてマスコミで発表されることがあるが、人口1000人当たりの出生数を示す従来の出生率が消滅したわけではない。
母の年齢計算は法律上の誕生日の前日加齢ではなく、常識的な誕生日加齢に従っていると思われる。前日加齢は日本だけで、世界の常識は誕生日加齢だからだ。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)