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桐生タイムスより

色即是空・空即是色/意味を想像する

 座右の銘というほどではないが、好きな言葉に「色即是空・空即是色」がある。般若心経の一節だとすぐ気付く読者もいるだろう。僧侶のように修業したことはなく、学者のように研究したわけではないので、経典の奥義を会得せず、ただ何となくわかったような気がしているに過ぎない。
 般若心経の原典は、古代インドで文章語として使われていた梵語で書かれたものを、中国の僧が漢訳し、それが日本に伝わって国内で流布した。7種の漢訳があるとされるが、262文字からなるものが最も有名である。般若経の心髄を簡潔に説いたとされる。
 唱えられた漢訳の心経を、耳で聞いただけでは意味が分からない。しかし文字をみると、漢文の知識があれば何となく想像できる。
 色即是空は色は即ち是れ空、空即是色は空は即ち是れ色の意味だ。しかし、色や空の意味が分からなければ、やはり意味不明で言語道断だ。
 言語道断は、普通「もってのほか」の意味に使われるが、本来は仏教語で「仏教の奥深い真理はことばで説明することができない」の意味で「ごんご」と呉音で読む。
 人生観は年齢・性・経験などによって異なり、十人十色だ。特に生死についての考え方は、若い時と年老いてからとは変わるのが普通だ。
 医師は駆け出しのときは、病気や死は患者がなると思っているが、後期高齢者になると自分のことだと受け止める。同窓会の話題で痛感する。大病を患ったり、意識が消失する全身麻酔を経験すると、人生観が変わる。
 さて、表題の色即是空・空即是色の意味だが、固定的実体について述べた教えだとされるが、宗教的・哲学的な奥義は容易には理解できない。
 比喩的に言えば次のようなものではなかろうか。自己は鏡に写った姿であり、鏡像は自分自身でもある。別の表現をすれば、山で色即是空と叫べば、空即是色と木霊が返ってくる。
 世界の三大宗教は仏教・キリスト教・イスラム教とされるが、日本人の考え方や日常生活には、仏教の他に神道や儒教も大きな影響を与えている。親孝行は儒教の代表的な教えだ。子育ては多くの動物に見られる生物学的な現象だが、親孝行は人類にだけ見られるようだ。親孝行したい時には親は無し。
 縁や縁起も本来は仏教語で、現在日常使われている言葉とは意味が異なっている。
 最近の住宅は縁側や縁の下がないので、「縁の下の力持ち」のことわざや意味を知らない若者が増えてきた。男女の交際の機会が減り、恋愛は面倒だと避ける風潮もあり、少子化の原因になっている。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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