重要文化財/昭和40年代の条例
富岡製糸場が昨年世界文化遺産に登録された後に、国宝に指定された。ノーベル賞受賞者が文化勲章を受章したような感じだ。
わが国の有形文化財には国宝や重要文化財がある。これらの文化財は文部科学大臣が指定する。昭和25(1950)年に公布された文化財保護法には、文部科学大臣は〇〇を重要文化財に指定することができる。と定められている。国宝についても同様である。
文部科学大臣以外の者は重要文化財にしてはならないとの禁止規定はないが、この条文は文部科学大臣以外の者は重要文化財に指定することはできないと解釈するのが普通だ。
法律は常識は規定しないことが多い。刑法には殺人を禁止する条文はなく、いきなり人を殺した者は、死刑又は・・・と規定している。
これに対し、医師法は医師でなければ、医業をなしてはならないと禁止した次の条で、医師でなければ医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならないと定めている。
にせ医師が医業をすると、国民の健康に重大な影響があるので、禁止規定を設けたのだろう。
桐生市が桐生倶楽部会館を重要文化財に指定したと、先日本紙は大きく報道した。市文化財保護法によると、昭和40年代にできた条例に基づいて指定したとのことだ。
条例は法律の範囲内で制定するものだ。文化財保護法に禁止規定がなく、文化庁から指摘がないからとして、市が重要文化財を指定してもよいのだろうか。
群馬・徳島・宮崎の3県には国宝がなかったが、昨年富岡製糸場が国宝に指定されたので、現在は国宝のない県は徳島・宮崎の両県だけだ。
京都や奈良の古都には国宝や重要文化財が多い。これらの府県には市指定の重要文化財は聞いたことがない。国宝がなかった群馬県では、県民や市民の要望があったのだろうが、奇妙な条例を作って、重要文化財を指定したのだろう。
しかし、これは一種の偽物作りではなかろうか。目の肥えた観光客はどう感じるだろう。
10年余り前、ある観光都市で、その市で最も有名な建造物を見学した。入り口で入場料を支払ってもらったリーフレットに、国宝と説明されていた。帰宅後調べたら、その建造物は昔は国宝だったが、当時は重要文化財であることが判明した。
数十年間うその説明書を配布していたのだ。抗議文を市長に送ろうかと思ったが、熟慮の結果やめた。
現在の説明書にどう記載しているかは知らないが、その市へは二度と行かないことにした。桐生市の文化財条例は再検討すべきではなかろうか。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)