八十八夜/文字遊びの発見
種まき・茶摘みによい「夏も近づく八十八夜」が間もなくやってくる。立春から八八日目の日とどの辞書にも記されている。しかし、よく見ると「立春から八八日目」と記している辞書と「立春から数えて八八日目」と記しているものとがある。
両者は同じ意味だろうか。以前当欄「自然数と起算日」で解説したが、0が自然数に含まれるか否かの問題だ。
民法の規定どおり2月4日の立春を起算日として暦に従って数えると、平年では2月は28-3=25、3月は31日、4月は30日で合計86日だから5月2日が88日目となる。
0も自然数だと現代風に考えて2月4日を0として数えると、八十八夜は1日繰り上がって5月1日になる。
八十八夜は昔からある言葉だから、1から数えたのだろう。
立春から起算する日は八十八夜の他に、二百十日や二百二十日がある。後者は「日」なのに、前者はなぜ「夜」というのか、ふと疑問に思った。
種まきも茶摘みも昼間の農作業だ。だのになぜ「夜」なのか?多くの辞書を調べても解説がない。
ラジオから「もういくつねるとお正月」という童謡が流れてきた。それを聞いてひらめいた。
当日起算の数えか翌日起算の満か。昔は年齢を数えで数えていた。年末の夜に生まれた子は数時間後に2歳と数えた。
仏事でも死亡1年後の忌を一周忌というが、翌年は二周忌ではなく三周忌という。
昼を基準に数えると、当日起算か翌日起算か疑問が生ずるが、童謡のお正月のように夜を数えると日付は明確だ。
すなわち、88回夜を経過した翌日を八十八夜と名付けた。手書きで原稿を書いていると、さらに興味あることに気付いた。
八十八はそれぞれ2画の文字だ。足し算では6だが、掛け算では8になる。夜は8画だ。従って八十八夜は八八だ。
江戸時代は文字遊びや言葉遊びが流行した。
賀寿の喜寿(七十七歳)傘寿(八十歳)米寿(八十八歳)卒寿(九十歳)白寿(九十九歳)はすべて文字の分解遊びだ。
現在のように、パソコンで印字すれば、漢字の画数には無関心だろうが、毛筆で墨書した時代は漢字の画数を常に気にしていただろう。
八十八夜と命名した後に八八画に気付いた命名者は大喜びしただろう。
私も、童謡の歌詞がヒントで、日を夜とした理由が分かり、さらに画数の八八が隠されているのに気付いて、大発見をしたような気分になり、独りで祝杯をあげた。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)