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桐生タイムスより

公衆トイレ/経済的効果の考慮

 先日の本紙に、西桐生駅前に公衆トイレが完成したと、写真入りで1面に大きく報道された。
 50年以上昔から、トイレや下水道に関心があったので、早速見学し使用した。新築の施設だから、立派で清潔だ。帰宅後新聞を読み直し驚いた。
 記事によると、女性団体からの要望にもとづき、約30平方㍍の建物に1454万円もの費用をかけたとのことだ。家一軒分ほどの予算でトイレをつくったという。
 見学した最初の印象は高価すぎる。坪単価が160万円もする。普通の市民は坪160万円もの費用をかけて家を建てるだろうか。坪と平方㍍とを誤ったのではないかと新聞を何回も読み直した。
 公衆トイレの建築や維持管理をする桐生市清掃センターに問い合わせた。群馬県の千客万来支援事業の補助金500万円をもらって市費で建築したそうだ。国の補助金はないという。千客万来というから観光客を狙っての意味もあるのかもしれないが、主として桐生市民のための施設なのだろう。
 一日平均何人利用して耐用年数何年間を考慮して、つまり使用するたびごと、1回平均何円になるかを計算して建てたのだろうか。
 公共施設を造るときは、補助金がついたから建てなければ損ではなく、経済的効果も考慮しなければ、結局税金の無駄遣いになってしまう。
 要望した女性たちも坪当たり160万円もする公衆トイレを望んだわけではあるまい。
 桐生市の公衆トイレについて考察してみよう。現在は撤去されて消滅したが、桐生市の中心街本町五丁目の角にあった第一勧業銀行の裏、末広町の郷土資料展示ホール近くの私有地に公衆トイレが新設された。夏の桐生八木節祭りの際には、多くの市民や観光客が利用した。
 立派な鏡付きの公衆トイレは高額の建築費で話題になったが、身分不相応な施設として市民の反感を買い、不良少年グループが鏡を破壊した。
 その後、老朽化した展示ホールの土地を市が売却したのに伴い、公衆トイレはホールとともに撤去され、現在は駐車場になっている。
 あのトイレは結局何年間使用され、使用1回あたり何円費用がかかったのだろう。
 東武鉄道新桐生駅のホーム側と、駅前広場側と背中合わせのようにトイレがつくられた。ホーム側は駅が、広場側は市が管理している。
 ホーム側のトイレは清潔だが、広場側のトイレは汚くて、市民や観光客から評判が悪かった。管理者と清掃業者との契約に差があったのだろう。
 豪華な施設を造れば、維持・管理に相応な経費がかかることを肝に銘じよう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 

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