一日警察署長/昔の話になるけれど・・・
歳末特別警戒として、大間々出身のお笑いコンビのアンカンミンカンが一日警察署長として街頭活動をしたと、本紙は写真入りで報道した。読者の多くは今年も歳末になったと感じただけで、特別の感慨はなかっただろう。
一時期、一日市長、一日駅長、一日警察署長のように一日〇長というのが流行した。
堅苦しい官公庁を身近な役所として親しみを感じてもらうよう、市民に呼びかけた運動だ。しかし流行は間もなく消え去り、一日警察署長だけが今日まで残っている。
初期は街の名士が一日〇長に起用されたが次第に変化し、生徒や幼稚園児までが狩り出され、最近は芸能人が多いようだ。
依頼する警察と、名前を売り出したいタレントとの利害関係が一致するためだろう。
10年余り昔かと思うが、一日警察署長に男子高校生1人と、女子高校生1人の2人が同時に委嘱された。警察は男女平等と考え、男子と女子に委嘱したのだろう。
総理大臣をはじめ、県知事・市長・駅長など、組織のトップは常に1人で、複数ではない。副市長や副院長のように副のつく人は、複数のことがある。
なぜ1人で、複数ではないかを深く考える人は少ない。最高裁判所の裁判官は15人もいるが、長官は1人で大法廷の判決は多数決である。
一日署長を依頼する警察は、自分の都合や宣伝効果だけを考えては駄目だ。特に相手が生徒や児童の場合は教育的配慮も必要だ。
男女の高校生を一日署長に委嘱したとき、私は警察を強く批判した。署長から弁明の電話があったが、その後複数の署長を委嘱することがなくなったので、警察幹部は私の主張を理解してくれたと安心していた。
ところが、今回2人署長が復活した。このイベントは全国的な催しか、県警単位かは知らないが、国会で議論した話は聞かないから、恐らく警察庁は関与していないのだろう。
協力したお笑いコンビがその経験を芸に生かすのは自由だ。
一日〇長は官公庁だけではなく、民間企業にまで及び、東京電力から依頼されて、数十年前、私は半日所長を務めた。一日所長は無理だが、半日所長なら引き受けると冗談まじりに言ったら、半日所長の辞令が交付された。
作業現場を視察したり、サービスの語源について講演した。その後、内部の書類の点検を依頼された。「毎度お引き立てに預かり、有難うございます」のあいさつ文に、独占企業としての自覚が欠如していると感想を述べた。
当時東電は完全な地域独占企業だった。私の真意を測りかねた所長に、引き立てるは競争相手がある場合の言葉だと解説した。社会勉強になり、懐かしい思い出だ。