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桐生タイムスより

表現の差/指折り数える

 「もういくつねるとお正月」の童謡を聞きながら、年賀はがきを書いているとき、ふと考えた。大人は活動している昼間で日数を数えるが、幼児は寝ている夜で数える。日付が変わる午前0時はねているから合理的だと思った。
 大人は指折り数えることは少ないが、幼児は実際に指を折って数えることがある。利き手の指を折って5まで数えるが、6は反対の手の指を折って数えるのは幼児で、多くの大人は、折った小指を伸ばして6と数え、10は指を全開した状態だ。
 アメリカ人は日本人と逆に、ジャンケンの拳(石)から、親指を立てて1と数え、5本の指を全部立ててパー(紙)の状態になった時が5だ。
 日本人がアメリカ人風の数え方をすると、気障な感じがする。5本の指と書いたが、アメリカでは指(フィンガー)は4本、手の親指(母指)は腕の延長と考えられていてサム、足の指はトーで足の親指はビッグトーだ。従って、薬指はサードフィンガーだ。
 日本では、昔は手のユビを指、足のユビは趾と使い分けられていたが、現在では手足の区別はなく、全て指だ。母指は手の指だか、足の指だか分からない。手の第2指は人さし指、第4指を薬指と呼ぶが、足の場合は何というか、辞書によって異なる。足も人さし指、薬指とする辞書もあるが、手の指だとする辞書もある。高齢者は手の指とする人が多いが、若い人は足の指にも用いるようだ。
 50階建てのビルは1階から50階まであるビルだと日本人は考えるが、ロンドンでは1階をグランドフロア、2階をファーストフロアというと、昔聞いたことがある。今でもそういうのかは確認していないが、文化の差か風習の違いか、面白い話だ。
 国による異同は、どちらが正しいかを議論しても仕方がない。表現の差だと受け入れるだけだ。
 利き手(腕)は指折り数えるだけではない。上衣を着る、ズボンをはく、靴をはく、歩き始めるなどの動作は、左右どちらから始めるかを意識することは普通ないが、利き手側から始めることが多いのではないだろうか。反対側から始めるとぎこちなく、うまくゆかない。年を取ると余計そうだ。 
 年を取ると赤ん坊に返るという。幻覚が生じた一時期、簡単な暗算ができなくなり、指折り数えたり、筆算したり、電卓を使用したり工夫した。1桁は可能だが、2桁はむずかしく、一晩中考え込んだ。幻覚が消えると元通り計算できた。
 幻覚の内容は、古今東西何でもありだが、不思議なことに喜怒哀楽はなく、涙は出ない。困ったと言いながら、経験した内容を楽しんでいたような気がする。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 

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