テレホンカード/社会福祉に生かせ
テレホンカードという言葉を聞いて、懐かしく思う年配者もいるだろうが、使ったことはもちろん、見たこともないという平成生まれの若者もいるだろう。
固定電話がほぼ全世帯に普及し、公衆電話の利用が増加した昭和57(1982)年に電電公社(現NTT)が発売したプリペイドカードがテレホンカード(略称テレカ)だ。
十円硬貨を使って公衆電話から遠距離に通話するとき、硬貨が落ちるのが早くて、追加するのが忙しかった時代がある。その後百円硬貨も使えるようになったが、釣り銭の問題もあり、電電公社はカード式電話機を開発し、料金払込み済みのテレカを発売したら爆発的に売れた。
1枚500円や1000円と買いやすさもあり、写真等も印刷できるので、引き出物や記念品にも用いられ、急速に世間に広まった。自分で購入したり、宣伝用に作成した人もいるが、他人からもらって引き出しにしまい込んだまま、忘れて死蔵しているカードも多いだろう。
未使用のカードは、電話料金のうち通話料金として支払いも可能だが、ほとんど知られていないので、携帯電話やスマートフォンが普及した現在、大半が死蔵されたまま放置されていると思われる。
私は先日NTTにカードを郵送して通話料金として支払いたいと申し入れたら、快く応じてくれ、使用中のカード3枚が返送されてきた。通話料1ヶ月分以上の未使用カードだったので、残金は翌月へ繰り越された。
社会福祉協議会のような公的団体が主力になって、隣組や町会組織の自治会を通じて、各家庭に死蔵されているテレホンカードを回収し、高額の電話料金を支払っている企業等の協力がえられれば、かなり多額の寄付金が捻出されるのではなかろうか。
寄付者は死蔵されているカードを供出するだけだから、懐は痛まず気軽に応じられる。
かって、使用済み切手や缶のプルタブ(引きふた)を多量に集めて、車いすと交換し、病院や老人施設に寄付するのが流行したことがある。これらがなぜ貨幣価値があるのか不思議に思い調べてみると、集荷先で使用済み切手と、商品価値のある珍しい記念切手とを分け、記念切手を切手市場に売り出し、通常切手は焼却していた。つまり、送料を支払ってごみを運んでいたのだ。現在はペットボトルのふたの回収がはやっている。
テレホンカードの回収ははるかに効率的に寄付金が集まる。
社会福祉協議会や協力する企業は、多少の手間と手数料はかかるが、特別の負担金は生じないから、実施はスムーズに可能と思われる。
全国的に行われると、寄付金は巨額となり、社会福祉の増進に役立つだろう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)