もっと温かみのある方法は/保険料の負担感
社会保険には医療保険・介護保険・年金のほかに雇用保険・労災保険などがある。保険料が高額なのは前3者だ。現役で働いているときは、税金と同様に給料から源泉徴収され、手取り(可処分所得)が減額され、何とかならないかと悩む。
しかし年老いて年金生活になると、これらの恩恵を受ける機会が増し、ありがたみが分かるようになる。
掛け金(保険料)は住民税を基準に計算されるが、住民税額の基となるのは所得である。
住民税や社会保険料は1年遅れで徴収されるので、退職した翌年はその額の多さに驚く人が多い。
前回のコラム「税金と社会保険料」で、年金受給者が再就職したとき、医療保険料が、26.6倍にもなる例を提示した。
今回はその実例を詳しく検討してみよう。
年金だけが収入源で、預金をおろして生活している老人が、健康を回復して週1回、半年間働いた。
給料から多額の所得税が源泉徴収されたが、確定申告でほとんど(93%)が還付された。
年金は隔月の偶数月に2カ月分が給付されるが、介護保険料や医療保険料が天引きされる。10月分から改訂される。
8月分と10月分を比較すると、介護保険料は2.5倍、医療保険料は26.6倍に高騰している。
実感が湧かない人は次の話に置き換えて考えてもらいたい。
アベノミクスの効果か、残業が増え、多少収入増になったので、久しぶりに家族旅行を計画した。しかし、子どもが通う県立高校からの通知に驚いた。月額1万円の授業料が10万円に1千円のPTA会費が5千円に増えている。旅行どころではない。どうしよう。
保険料の通知書には計算の根拠が解説されている。それに従って計算すると、誤りではなく、現行法ではその額となる。担当課に電話して苦情を訴えるのは無駄だ。
一方、患者の治療に要した医療費や、薬価の安いジェネリック薬品をすすめるはがきが年に数回送られてくる。医療費節減にどれだけの効果があるのか知らないが、保険料の通知にもっと工夫をこらしたほうがよい。
現行のように、大幅な増額は働くなと禁止されているようで、働く意欲が湧かず、病院に入院しているほうがよいとさえ思う。
冷静に考えると、年金受給者は税金や社会保険料で、保護・優遇されているのだ。各人の保険料の他に1人当たりの平均保険料の記載があれば、自己の保険料と比較して評価し、プライドを持ったり感謝したりするだろう。
被保険者の立場に立って、もっと温かみのある方法をかんがえてもらいたい。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)