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桐生タイムスより

税金と社会保険料/年金生活者が働くと

 国民所得に対する租税の割合を租税負担率と称し、経済統計に使用されてきた。しかし、給料から源泉徴収される健康保険料と自営業者や農民が自ら納める国民健康保険税とは目的が同じなのに、前者は料だから税に含めず、国保税は名称が税だから、租税負担率の計算に含めたのでは一貫性がない。
 国保の掛け金は群馬県では国民健康保険税だが、東京都では国民健康保険料である。地方では税のほうが強制的に徴収しやすいのだろう。
 社会保険料は税ではなくても、給与所得者にとっては、給料から源泉徴収され、実質的には税と同様である。
 健康保険や介護保険・年金などの原資を税とするか、料とするかは国によって異なり、国際比較をするには、税と社会保険料との合計額で論ずるのが、分かりやすい。
 そのため、税と社会保険料との合計額が国民所得に占める率を国民負担率といい、国際比較に用いる。
 北欧諸国は高福祉・高負担で、アメリカは低福祉・低負担だ。日本はその中間だ。どちらがよいかは国民性により、最終的には国民が決めることになる。
 さて、私は79歳で開業医をやめ、年金生活者になっていた。三浦雄一郎さんが80歳でエベレストに登頂したのに触発され、胃切除後健康を回復したこともあり、昨年7月から週に1回、健康診断を手伝うことになった。
 支給された給与から高額の源泉徴収がされていたが、確定申告で93%が還付され、わずかの所得税で済んだ。
 住民税や医療保険料・介護保険料などは1年遅れで額が決まるが、保険料は年金から源泉徴収される。昨年までは介護保険料のほうが後期高齢者医療保険料よりずっと高額だったが今年は逆転して医療保険料が介護保険料の2倍近くになった。
 2か月ごとに支払われる年金から天引きされる保険料の変更は10月に行われる。8月分と10月分とを比較すると、介護保険は2.5倍になるが、医療保険は26.5倍だ。まさに桁違いだ。
 私は手術後は世間に不満を訴えず、感謝の気持ちで暮らすように心掛けているつもりだ。保険料が高額すぎても給料全額を持って行かれるわけではないが、余りにも高騰した保険料を課せられると、働くなと禁止されているような錯覚にとらわれる。
 冷静に考えると、高額の医療保険料は、これが本来の料金で、昨年までは年金生活者としての大幅の軽減措置を受けていたのだ。
 老人は若者に比べると、税や社会保険料で優遇されている。しかし、それを自覚し、感謝して暮らしている人は少ない。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)
 

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