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桐生タイムスより

敗者に注目/見方を変えれば

 歴史は勝者、征服者により語られることが多い。古事記や日本書紀は天皇側から見た歴史書だ。
 しかし、日本には判官贔屓の言葉のように敗者に対する思いやりもある。義経記や平家物語は何となく物悲しい。忠臣蔵は赤穂と吉良のどちらが勝者か、考え方による。
 現在の書物や映画・ドラマはすべて赤穂方からみた話になっているが、吉良方を主役にして記すと別の話になるだろう。
 スポーツの愛好者は、ほとんどが観客か選手の立場から楽しんでいる。自分が主催者として大会を運営する立場で考えてみよう。野球大会では、何日間、何試合分、球場を確保するかが、最初の課題だ。
 全国47都道府県から一校ずつ選抜されたトーナメント(勝ち抜き戦)方式で、引き分けがなければ何試合かを例に検討してみよう。
 47は奇数だから一回戦を23試合とすると一校が不戦勝となる。2回戦は不戦勝の1チームを加えた24チームで競うから12試合だ。3回戦は6試合、4回線は3試合となるが、5回戦はどうか。決勝戦は2チーム、1試合だから準決勝は4チーム2試合だ。決勝戦を成立させるためには5回戦(準決勝)では1チームを不戦勝とし、1試合としなければならない。従って全試合数は23、12、6、3、1、1の合計46試合となる。
 実際の甲子園大会では、決勝戦2チーム1試合、準決勝戦4チーム2試合、準々決勝8チーム4試合のように逆算して設定し、不戦勝チーム数はそれまでの1回戦、2回戦で調整している。
 これを暗算でするのはむずかしい。不戦勝チームがあると、足したり引いたりで、ややこしい。
 勝ち抜き戦だからと勝者に注目すると、組み合わせがむずかしくなる。だが視点を変えて、トーナメント方式を負け抜け戦と考えてみよう。A・B両校が戦い、引き分けがないなら、必ず1校が負けて抜けてゆく。
 優勝とは一度も負けないことだ。すなわち、47参加校のうち優勝校を除いた46校が負け抜けとなるので、参加校から1を引いた46試合をすれば優勝校が決まる。
 この計算は、参加校数に関係なく1を引いた数が試合数である。
 戦争はもちろん、スポーツでもゲームでも参加者はすべて勝とうと努力する。八百長試合でないかぎり、勝つことが目標だ。
 試験では一点でも良い成績を取ろうと努力する。しかし、入学試験成績の悪い順番で入学者を決める学校があったら面白いと思うことがある。成績の良いものは学校教育を受けなくても独力で勉強すれば生きていけるからだ。成績の悪いものほど教育が必要だ。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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