人口対策/発想転換し努力を
日本は敗戦による復員兵のため、戦後人口が増え、彼らが結婚したのでベビーブームとなり、生まれた子らは団塊の世代と呼ばれたが、定年退職になりつつある。
経済は右肩上がりの好景気だったのが、デフレが長く続き、人口が減少している。大都市は人口増加しているところもあるが、地方都市はほとんどが、商店街がシャッター通りとなり、買い物客は少なくなった。
車の渋滞が減少し、朝の通勤・通学が楽になったのはよいが、空き家は増加し廃止された学校もある。
これらの原因は少子化と転出によるもので、地方都市はその防止に大わらわで、対策を練っているが、有効手段はないのが現状だ。
桐生市は超高齢化社会となり、平成25(2013)年度に総合政策部企画課に人口対策室を設け、平成26年度から本格的に諸政策を実行し始めた。
対策室が最初に行うべきことは、現状を正確に捉え、統計学を基礎から学ぶことである。広報きりゅう5月号の記事は、やる気だけは十分のようだが、人口統計の用語の定義を知らず、グラフの数字が一致しない。群馬県発表と桐生市発表の人口も世帯数も著しく差がある。
先日発表された民間の「日本創生会議」の人口推計は、国立社会保障・人口問題研究所の推計より、さらに悲観的で厳しい。
人口減少が不可避なら、発想を転換して、減少しても悪影響を被らない対策を事前に講じるよう努力するのがよい。
地方都市が人口確保で競うのは、コップの中の嵐にすぎず、根本的な対策は移民の受け入れと出産数の増加以外にはない。
しかし、両者とも人種問題や人生観・道徳観の相違等が関係し、国全体の問題で、その解決は容易ではない。地球全体や人類の問題ともいえるだろう。
地方自治体は手をこまねいて傍観しているわけにもいかず、努力が必要だ。「子育て日本一」と唱えるだけでは駄目である。
すぐに実行可能な方法もある。市民課の窓口に婚姻届や出生届を提出した市民に「おめでとうございます」と笑顔で声をかけ、記念品を手渡すのも一つのアイデアだ。
予算がないのなら、死亡届を提出した人に手渡している市長の弔辞を廃止すればよい。
新しく転入してきた人には不安が多い。市役所の公的サービス案内のほかに、自治会(町会・隣組)や交通、医療機関や介護施設等の案内書を転入者の目線で作成し、疑問や不明な事項はどこに電話をすればよいかを示して転入者に交付するのもよい。
自治会費は住む場所によって、かなりの格差があるようだ。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)