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桐生タイムスより

四季の色/民族による感覚の違い

 春夏秋冬の四季を色で表現すれば、それぞれ何色を配するかは、各人各様だろう。
 古代中国の五行説では、青・朱・白・黒を配し、青春・朱夏・白秋・黒冬としている。
 青春は日本でも完全に定着しているが、残りの3種は初めて聞く人が多いのではないか。
 春に青を配するのには異議がないだろう。
 晴天を青空、海の色も青という。青には若いという意味もあり、青年と表す。若いので未熟を指すこともある。青二才はボラの幼魚が語源らしい。
 所得税の確定申告に青色申告という制度がある。申告用紙が青色のための表現だが、所定の帳簿を備え、収入と支出を正確に記帳し、事前に税務署の承認を得たものは、一定の所得控除の特典がある。
 青といえば、「青い山脈」を連想する人が多いだろう。石坂洋次郎作の小説だが、映画化され、主題歌は現在でも高齢者が愛唱し、老人施設を訪問する歌謡団は必ずこの曲を演奏する。
 交通信号は青・黄・赤だ。一時期、信号機の進めの色は青ではなく緑だと強く主張する人が出現し、教育者の間で論争されたが、道路交通法では「青」と規定しているので、青のままである。光源がLEDに変更後は、青でも違和感はない。しかしこの論争の影響か、学童の登校時、旗を持って交通安全を図る婦人を緑のおばさんと呼ぶようになった。
 夏の色は朱(赤)で、朱夏という。真っ赤な太陽や彼岸花の色の連想で、赤〓夏でも納得できる。
 日本の幼児は太陽を赤のクレヨンで描く子が多いが、欧米の幼児は黄で描くという。また、性映画を日本ではピンク映画というが、アメリカではブルーフィルムというようだ。民族によって色の感覚が違うのだろう。
 五行説では、秋に白を配し、白秋という。なぜ秋が白なのか、私は想像できない。白菊のほかは、詩人北原白秋(1885~1942年)を連想するにすぎない。白は雪で、冬景色だ。今年は2月中旬、関東地方では観測史上初のドカ雪で、各地に被害が生じた。
 冬には黒が配され黒冬または玄冬という。冬と黒との関係は白秋以上に見当がつかない。玄冬は「ゲントウ」、古くは「ケントウ」と読んだらしい。
 五行説は古代中国の陰陽五行説で、木・火・土・金・水の五つの元気を万物組成の元素としている。木の時期は春、色は青、十干は甲・乙、十二支は寅・卯。火は夏、赤(朱)、丙・丁、巳・午。土は土用、黄、戊・己、辰・未・戌・丑。金は秋、白(素)、庚・辛、申・酉。水は冬、黒(玄)、壬・癸、亥・子がそれぞれ配されている。天体にはこの外に太陽(日)と月とがあり、七曜を構成している。
 (1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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