自動化/不便なこともある
日進月歩の技術革新により、機械・器具が自動化し、一見便利な世の中になったような気がするが、冷静に考えると、かえって不便になったり住みにくくなったものもある。
エレベーターは、昔はデパートではエレベーター・ガールという若い女性の係員が操作し、各階売り場や催し物の案内をしてくれたが、現在では各自がボタンを押して自分で操作し、あいさつをしないで黙って乗降するのが普通だ。
日本最初のエレベーターは浅草にあった展望塔だと思っていたが、福井県永平寺に設置された荷物運搬用の装置が最初らしい。
エスカレーターは昔は2人並んで乗っていたが、現在では1人ずつ縦(上下)に並んで乗り、片側を急ぐ人のために空けておくのが主流だ。
関東では右側を、関西では左側を空けるのが、慣習になっているようだ。
家庭電化製品や電話・自動車までも自動化が進み、運転者がいなくてもコンピューターが判断して安全に走行できる日も遠くないとのことだ。
トイレットの器具の開発競争は日本が断トツで、来日した外国からの観光客がホテルで初めて使用して、その快適さにほれ込み、土産に買って帰る人もあるという。
以下は、一昨年、胃がん手術のため入院し、術後数日の私の経験である。
手術が成功し消化管からの出血の有無を調べるため、検便をすることになり容器を渡された。入院した部屋は個室で、最新式の自動化トイレだ。
このトイレは人を感知する装置がついていて、自動的に腰掛け式便器の蓋が開閉する。さらに排便し終わり立ち上がると、自動的に水が流れ、便を流し去る。したがって、採便しようとしても大便は流れ去っており、採れない。
私は自動流水装置を停止するよう、看護師に頼んだ。病院の職員用のトイレには、そんな装置はついていないのか、看護師は私の話が理解できない表情なので、この病室のトイレで試すよう要望した。
トイレを実際に使ってみて初めて話の内容を理解した看護師は、仲間に相談して、腰掛け式のポータブルトイレを持って来て、これを使って採便しろと言う。
自動流水装置を止める方法を病院の誰も知らず、設備業者に頼んでも、いつ来るか不明なのだろう。
私は自力でトイレに行ける体力となったのだから、ポータブルトイレを使用するのは抵抗感がある。いろいろ考えた揚げ句、全く別の方法で採便した。窮すれば通ず。その方法はまた別の機会に。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)