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桐生タイムスより

牛と午/角をとって馬にした

 牛と午は一見似たような漢字だが、誤植されることは少ない。未と末、鳥と烏はときどき間違われる。天は昔1画目が2画目より短かったが、戦後は1画目を長く書くようになった。吉は口の上が土か士か、両方とも使われていたが、吉田茂首相の鶴の一声で、現在は吉が標準字体だ。
 今年の干支はウマで馬の絵を描いた年賀はがきが多いが、漢字は馬ではなく午と書く。
 なぜ午が馬なのか、長い間不思議に思っていたが、7回目の年男になって、やっとその理由が分かり始めた。
 古代中国では時や月は12進法だった。1日を12に分かち子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥とした。識字率の低い当時の農民にはむずかしすぎるので、身近な動物でそれぞれを示すようにした。
 十二支が日本に輸入されると、ね・うし・とら・う・たつ・み・うま・ひつじ・さる・とり・いぬ・い、と読まれ、動物は中国のとおり、ねずみ・牛・虎・うさぎ・竜・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・いのししが当てられた。
 竜だけが想像上の動物で、残りの11種はすべて陸上の身近な動物だ。
 漢字は象形文字が多い。牛は頭部を正面から見た文字で、4画目の突き出た部分は角だろう。
 一方、馬は全体を横から見た象形文字とされる。牛も馬も農耕に使われ、大きさも同じようだが、牛には角があり、馬にはない。
 丑に牛を当てたので、牛の角を取った形の午を馬に当てたのではなかろうか。
 午を漢和字典で調べると、陰暦5月には、北斗七星の柄に当たる部分が午の方位(南)をさすので、5月を午に当て、5月5日の節句を端午の節句、略して午節という。十二進法では前半が終わり後半がはじまる位置にあって、前後の交差する数のことを午という。五(十進法で前半と後半との交差する数)と同系のことば。「馬」に当てたのは農民がおぼえやすいように十二支に動物を配した秦漢の農歴の影響で、本来は「馬」とはなんの関係もない。
 と分かりやすい興味深い解説がある。
 広辞苑の「端午・端五」の項は(「端は初めの意。もと中国で月の初めの午の日、のち「午」は「五」と音通などにより5月5日をいう)五節句の一つ。5月5日の節句。と説明されており、北斗七星の話はない。
 十二支は時刻の表示にも用いられ、昼の12時は正に午の刻で正午、それより前を午前、後を午後という。
 夜の12時は正に子の刻で、江戸時代には正子といったが、現在は死語となり、午前0時が正式の表示法となった。
 (1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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