年齢の数え方
山本輝通
桐生市医師会 会員
戦前数え年で表示していた年齢が、戦後は満で数えるようになったが、喜寿(七十七歳)米寿(八十八歳)白寿(九十九歳)など高齢者の賀寿は、昔どおりの数え年で祝うことが多いようだ。
ほとんどの人は、満年齢は誕生日に加齢すると思っているが、法律上は誕生日の前日に加齢すると解釈され、運用されている。
子どもが生まれた日に一年定期預金を預けると、民法百四十条の期間計算法により、翌日から数えて一年(三百六十五日)後、すなわち一歳の誕生日に定期預金は満期を迎える。
これに対し、 年齢の計算法は、明治三十五年に制定された「年齢計算ニ関スル法律」で、出生の日から起算することになっているので、三六五日目は誕生日の前日で満一歳と数えることになる。このように常識と法律とでは一日の差が生じる。
文部省所管の学校や幼稚園では、年度末の年齢を基準にしているので、四月一日生まれまでが早生まれであるが、厚生省管轄の保育園では年度始めを基準としているので、四月二日までに生まれた子どもが年長組になる。
年金や 医療の分野では、一ヵ月分をまとめて処理している。七十歳から適用される老人保健法では、一般には七十歳の誕生月の翌月からと説明されているが、正確には「七十歳に達した日の属する月の翌月の始め」からだ。
従って、九月十五日生まれの人は十月一日から適用されるが、九月一日生まれ人は誕生日の前日(八月三十一日)に七十歳に達するので、その属する月(八月)の翌月(九月)の始め(一日)から適用となる。すなわち大部分の人は誕生月の翌月からだが、一日生まれの人だけは誕生月から適用されることになる。
国民年金も同様で、一日生まれの人だけは誕生月から支給される。
これらの矛盾は、昭和二十五年一月一日から施行された「年齢のとなえ方に関する法律」で、「数え年によって言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律の規定により算定した年数によって言い表わす」ことにしたからである。
換言すれば、数え年を満年齢に改めるのなら、その基礎となる日数計算も満にすべきであるのに、数えのまま放置したためだ。
法律と常識の矛盾を解消して、誕生日に加齢するように法律を改正してほしいと、二十年ほど昔、当時の群馬行政監察局に強く要望し、同局もかなり熱心に動いてくれたが、残念ながら法改正は実現せず、今日に至っている。