博物館/「対価」の位置付け
博物学は生物学・鉱物学・地質学の昔の総称で、学校で学んだが、現在では博物は博物館としての用語以外にはほとんど使われない言葉だ。
美術館は博物館と似たような組織で、法律上は博物館の一種だと説明されると、そうかなと思い、あまり違和感を抱かないが、動物園・植物園・水族館も法律上は博物館だと言われても、ホントかいと首を傾げる。
一方、図書館法では公立図書館は入館料等の徴収を禁止しているが、別の条で私立図書館には入館料等を認めている。
博物館法の23条は次のように記されている。
公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。
ところが、入館料を徴収できる私立美術館の運営に配慮したのか、公立美術館の多くは但し書きを適用して入館料を徴収しているのが現状だ。
しかし、公立博物館は無料開館が原則だということをしっかり覚えておこう。
博物館または美術館という名称の施設であっても、博物館法により文部科学大臣や都道府県の教育委員会に登録されている施設と、無登録の施設とがある。
桐生地区では私立の大川美術館は登録されているが、公立のものは登録されていない。桐生が岡動物園は法律上は博物館のはずだが、公園の一部として運用されているので、桐生市公園緑地課が所管している。
東京の上野動物園は博物館法上の登録施設だ。
動物を数える助数詞は頭・匹・羽などであるが、前述のように博物館の一種だから、動物を展示物といい、1点・2点と数えるのが正式らしい。
新明解国語辞典は編集者の主観が前面に押し出されている辞典として有名だが、動物園を次のように説明している。
捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として都人士に見せる啓蒙を兼ねた娯楽施設。
極端な一方的な見解だと思っていたが、動物園は博物館の一種だと考えると、案外正確な説明かもしれない。
また、図書館法17条には次の規定がある。
(入館料等)
公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
強い口調で金銭徴収を禁止しているが、多くの図書館はコピー有料で運営されている。図書館法が公布された昭和25(1950)年にはコピー機がなく想定外で、その後コピー機が普及し、条例で有料と定めたのだろう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)