デジタルとアナログ/辞書で見比べる
デジタルやアナログは若者にとっては日常語だろうが、高齢者には理解しにくい言葉だ。
時計で説明すると分かりやすい。時刻の表示を針で示すのがアナログ時計、数字で表示するのがデジタル時計だ。
経済が右肩上がりでインフレ傾向だった頃に、円形の文字盤の針ではなく、1・2・3のような算用数字で時刻を表示するデジタル時計が出現し、またたく間に流行し、従来の針で示すアナログ時計がなくなるかと危惧されるほどになった。
現在でもテレビ画面の隅に時刻が数字で示されているのは、その名残だ。
デジタル(digital)は「数字の」という意味の英語だが、もとは(digit)「指」というラテン語に由来する。数えられるということだろう。
指を使って数を数えるとき、日本人はジャンケンのパー(紙)の位置から親指を折って1、人さし指を折って2のように数え、5になるとグー(石)の形となるが、欧米人は逆に、グーから親指を立てて1、人さし指を立てて2のように数え、パーは5だ。
日本人でもまれに欧米風に数える人がいるが、きざっぽく見える。
アナログ時計でも、針が流れるように動く時計と、1秒や1分ごとにピッピと動く時計とがある。前者は「時が流れ」、後者は「時を刻む」ような感じだ。どちらがよいかは各人の好みだが、私は前者を愛用している。
カタカナ語辞典で頭にデジタルを冠する言葉は49も立項されているが、アナログは7語にすぎない。
その中からデジタル万引を引用する。
書店の店頭で、カメラ付き携帯電話を用いて、未購入の雑誌や書籍の内容を撮影する行為。携帯電話端末の機能向上に伴い急増しており、著作権の侵害につながる行為として問題視されている。日本雑誌協会と電気通信事業者協会が2003年(平成15年)7月に行った防止キャンペーンで用いられた語。
アナログ(analog)の語源は「相似物」の意味らしいが、広辞苑6版の解説が面白い。
①ある量またはデータを、連続的に変化しうる物理量(電圧・電流など)で表現すること。←→デジタル。②比喩的に、物事を割り切って考えないこと。また、電子機器の使用が苦手なこと。「―人間」
話は変わるが、誰でも知っている芭蕉の句「古池や蛙とびこむ水の音」は、蛙が単数か複数か不明のため、英訳は困難という人がいるが、私は単数だと思っている。デジタル人間には単数か複数かは重要問題かもしれない。しかし、アナログ人間には数を問題にすることが問題だ。気にしない。
長生きするのはアナログ人間だ。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)