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桐生タイムスより

親切/見習いたいこと

 親切とは親を八つ裂きにするのではなく、人情のあついことだ。親は親しいの意味だ。昔は深切と記した小説もあったが、現在のマスコミは親切一辺倒だ。
次に記すのは栃木県下都賀郡壬生町で親切にされ、うれしかった話だ。
壬生といえば、私は京都と新選組を連想する。近藤勇を隊長とする新選組の屯所があったのが壬生だ。栃木の壬生は京都の壬生とは無関係で藩主の氏から由来しているようだ。
玩具工場が栄え、「おもちゃの町」駅を設けたが、現在は工場は中国等に移転し、獨協医科大学病院の町として栄えている。
玩は「もてあそぶ」とも読むが、接頭語の「お」がついて、「おもちゃ」に変化したらしい。
先日、産業医学講習会を受講するため、初めて壬生町を訪れた。東武鉄道のおもちゃ町の駅には独協医大病院まで徒歩15分と大書されていた。町を見物しながら歩いて行こうかと思ったが、バスの運転手が休憩していたので尋ねると、バスは病院行きだと言うので乗車した。
 バスはまもなく発車したが、途中停車することなく、数分後終点の病院前に到着した。乗客は私一人で、安い料金で悪いような気がした。
土曜の午後で病院は休診だったが、講習会場は病院ではなく、隣接する大学の講堂で、病院の案内係は院内のことしか知らなかったが、案内図を見せると、向こうの棟ですと指さした。
工事人に聞いても会場を知らなかったが、警備員が来て会場まで案内してくれた。「明日は案内板を数カ所に掲示しますが、今日は下見ですか」「どちらからお見えですか」と丁寧に質問する。
昔、私立大学病院の職員はあいさつが丁寧だと聞いたことがあるが、なるほどと納得する。
病院前の交番で宿泊するホテルの地図を示し、道を尋ねた。お巡りさんは地元の人ではなく、ホテルを知らなかったようだが、住宅地図を見て所在地を確認した後、定規をあてて距離を計算し、ここから300㍍ほどですと教えてくれた。
 翌日、講習を終え、会場から徒歩で駅へ行く途中、駅の目前で不覚にも転倒し、しばらく起き上がれなかった。
車が信号待ちで止まり「大丈夫ですか」と声をかけてくれた。やっとの思いで立ち上がり、歩道のベンチに腰掛けていた人に座席を譲ってほしいと頼んだら、快く受け入れて立ち上がり、「けがはありませんか」と心配してくれた。
壬生の人はほんとに親切だ。私も見習いたい。
 (1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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