高校生の選挙アルバイト/極めて遺憾だ
先日の本紙の報道によると、今夏の参議院議員選挙で、桐生市立商業高校生(2、3年生)10人が、投票所の受け付け事務を時給740円で手伝うとのことだ。桐生市選挙管理委員会・桐生市教育委員会・学校のすべてが合意し、10人の生徒が小学校5校の体育館の投票所で、午前・午後に分かれ、有権者が持参した入場券の番号を読み上げる作業が業務内容で、従事する生徒はすでに決まっているという。
あまりにも非常識な内容に驚き、何回も記事を読み返した。若者の選挙離れを防止するのがねらいで、群馬県内では初の試みだそうだ。
公職選挙法には未成年者が選挙事務に従事することを禁じる直接の条文はないが、同法を全文読むと、選挙権のない少年は選挙にかかわる仕事につけないことは当然のことだと分かる。
乳児を背負って投票に来た有権者を排除することはないが、公民教育と称して未成年の高校生を連れてきた有権者に対しては、投票所への高校生の入場を許可せず、外で待っているよう、投票管理者は説得するだろう。
マスコミの記者に対しては、投票者に話しかけない等の条件付きで撮影を許可している。そのため、記者は場内で取材できず、出口調査をしているのだ。
投票所に入場できるのは、その投票所で投票する有権者(成人)だけなのに、入り口でそれを確認する作業に未成年者を従事させるのはなぜだろう。
投票所は有権者が代表を選ぶ神聖な場所だ。コンビニやゲームセンターではない。
また、選挙管理委員会は公平に仕事をしなければならない。アルバイト学生を採用するのなら、すべての学生に呼びかけるべきだ。なぜ特定の学校の生徒にだけ呼びかけたのだろう。
有権者しか入場できない投票所で、未成年の高校生を働かせる理由はなにか。近い将来有権者となるための公民教育が目的なら、教師が引率して、投票の妨げにならぬよう注意して見学するのならよいだろう。
学校設置者からの要望とはいえ、校長や教員はなぜ断らなかったのか。断れるような職場の雰囲気ではなかったのだろうか。
選挙の本質から考えても、教育面から考えても、高校生の投票所での選挙アルバイトは極めて遺憾だ。
選挙管理委員会は総務省の選挙担当局に照会して再検討し、教育委員会と話し合って中止すべきである。
過って改めざる是を過ちという
過って改むるに憚ること勿れ
論語
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)