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桐生タイムスより

郵便はがき/古代インド式に

 郵便制度は坂本龍馬と同い年の前島密(1835~1919年)が創設し、郵便や切手などの名称も彼が考案した。また国字改良論者としても知られる。
 郵便はがきは正式には葉書と漢字で記すが、現物には「郵便はがき」と記されている。ただし200枚を一束にした包装紙は「郵便葉書」だ。
 19世紀イギリスで郵便馬車が広場に到着すると、付近の住民が集まってくる。ロンドンに遊学している子弟の安否を知るため、封筒を手にするが、太陽に向かってかざし、異状なしの印を確認すると、親たちは受け取りを拒む。
 郵便料金がかなり高額だったのだろう。これでは郵便会社は立ち行かないので、ローランド・ヒルが前納方式の切手を考案した。
 わが国では発足当時から料金前納制度だったが、はがきは2年後の明治6(1873)年に誕生した。
 郵便はがきは英語でpostcardと言うが、ポストの語源はイタリア語のpostaとのことだ。郵便ポストは英語ではpilarbox、米語ではmailboxだ。pilarは柱の意味だが、日本では最初は英語を直訳して郵便柱箱と言った。
 郵便制度は前島の発案だが、はがきは彼の友人青江秀が考え出したらしい。当初は市内5厘、市外1銭だったが、明治16(1883)年に市内、市外とも1銭になった。
 郵の呉音はウ、漢音はユウで訓はなく、常用漢字の音訓表ではユウだけだ。郵は飛脚の意味である。便は呉音がベン、漢音はヘンでビンは慣用読みで、ビン・ベン・たよりの音訓がある。
 便の漢字は本来「たより」の意味で、大・小便の意味はなかった。大便は消化管・小便は泌尿器からの便りであり、健康管理上重要な情報だ。
 郵便はがきは、最初「郵便ハガキ紙」または「ハガキ紙」と記され、後に「ハガキ」と表記された。その後「葉書」「端書」と2種の漢字表記が見られたが、明治時代は端書が主流だったようだ。端書はメモの意味だろう。
 「はがきの木」とか「郵便局の木」とかいわれている植物がある。タラヨウ(多羅葉)でヤシ科の木だ。葉の裏に鉄筆やボールペンなどの硬いもので文字を書くと、その部分が黒変して字が浮かび上がる。昔は写経に用いたという。古代インドで手紙を書くのに使用した。
 木は、桐生郵便局の入り口付近に植えられている。この葉にボールペンで文字を書き、切手(定形外)を貼って投函したら、桐生タイムス社から無事届いたとの電話があった。
 (1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)

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