デマンドタクシー/だれが考えたのだろう
広報きりゅう3月号によると、飛び地合併した黒保根町と新里町に、4月1日からデマンドタクシーが運行するとのことだ。
聞き慣れない、意味不明のこの名称をだれが考えたのだろう。
まず、バスやタクシーの歴史や語源を調べてみた。両語とも英語由来の外来語だが、現在では完全に日本語に同化して、誰でも知っている。バスは昔、乗合自動車といわれたが、明治に乗合馬車として発足した。オムニバス(omnibus)はラテン語で「すべての人のために」という意味だ。
バスは路線バスと観光バスとに大別される。路線バスはあらかじめ定められた路線だけを走り、途中に停留所を設け、乗客は発着地と停留所以外では乗降できない。
これに対し、観光バスは出発地で集団の客を乗せて目的地まで運ぶ。停留所はない。
タクシー(taxi)は料金メーター付き営業用自動車で、大正元(1912)年8月、東京数寄屋橋にフォード車6台で開業したのが始まりとされる。
タクシーと似た車にハイヤー(hire雇う)があった。明治40(1907)年ごろ、東京で始まり、客の送迎、冠婚葬祭などに用いられたが、現在ではタクシーとハイヤーの区別はなくなり、タクシーと呼ばれることが多い。
東京のような大都市では、流しのタクシーは客が乗ってからメーターを立てるが、桐生のような地方の小都市では、連絡を受け出発した地点から料金計算が始まる。
この料金計算体系の相違が理解されず、大都市からの観光客には、桐生のタクシーは不評である。
バスとタクシーの中間にデマンドバス(demand「要請」bus)―呼び出しバスがある。都会では一定の基本路線以外の分岐コースに設けられた呼び出しボタンを押すと、無線指令を受けたバスが分岐コースへ回り道をする。農山村などでは呼び出すとバスが迎えにいく。昭和47(1972)年に大阪府箕面市で始まったという。
タクシー(taxi)は税(tax)とどういう関係かは不明だが、客のデマンド(要求)に応じて指示された場所に迎えに行き、目的地まで運ぶ。すなわちデマンドに応じて運行しているのに、わざわざデマンドタクシーと名づけられたのはなぜか。
乗客から要求されても希望の場所まで走行できず、飛び地合併した旧桐生市内より近い隣のみどり市の特定の病院と大型スーパーまでしか行かない。
お年寄りの利用者にはカタカナ文字は理解困難だ。デマンドタクシーは、分かりやすい、町内タクシー、循環タクシー、予約タクシー、相乗りタクシー等に名称を変更したらどうだろう。関係者の英断を望む。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)