受章・受賞/同じ発音の混同
京都大学教授の山中伸弥さんが、ノーベル医学・生理学賞と文化勲章とをダブル受賞(受章)した。
受賞・受章と記したのは、ノーベル賞は受賞・文化勲章は受章だからだ。前者の受賞者には賞金・後者の受章者には勲章が授与される。その式典を前者は授賞式・後者は授章式という。
発音は同じ「ジュショウ」でも漢字は受賞・受章・授賞・受章と異なる文字を使用する。
勲章をもらう受章者をたたえるのは授章式だが、文化勲章は天皇ご自身が手渡されるので、特に親授式という。
文化勲章には年金がつくと誤解している人が多いが、年金は文化功労者に与えられるのであって、文化勲章に付随するのではない。
文化勲章の受章者は同時に文化功労者となるので、結果的には文化勲章に年金が付随しているとみえるだけだ。
栄典を授与することは憲法第七条に定められた天皇の国事行為の一で、栄典には特権を伴わないので、文化勲章には年金や賞金はないことになっている。
文学賞は芥川賞・直木賞が有名だが、両者の他に、作家の名を冠した多くの文学賞がある。これらはすべて賞金がついているので、もらう人は受賞者だ。
似たようなショウに県知事などの「ヒョウショウ」がある。これは賞や章ではなく表彰と記すが、それを受ける人は受彰者ではなく、被表彰者や表彰される人と表現する。会社や団体などに長く勤めた人をほめる永年勤続者表彰に金一封が渡されても、一般的には表彰だ。学校で児童や生徒を褒めて与えるのは表彰状だ。
賞・章・彰の三つの「ショウ」は発音が同じで混同されることも多く、誤記されることがある。どの「ショウ」か、主催者に尋ねなければ不明のことさえある。
大相撲の千秋楽で、昔、外国人がたどたどしい日本語で「ヒョウショウジョウ」と読んで渡すのが話題だった。たぶん表彰式だったのだろう。スポーツで優勝者に盾や旗を贈る式典も表彰式という。
テレビのクイズ番組で、正解者や優勝者に賞金や旅行券が与えられるものがある。これも一般的には表彰だと思われる。
勲○等という制度がなくなり、旭日小綬章・端宝双光章・旭日単光章など、どれが上位の勲章なのか、分かりにくくなった現在、叙勲という言葉は消滅したのかと思ったが、なぜか、まだ叙勲という言葉は生きているようだ。人の価値や功労を数字で序列をつけるのはよくないと言いながら、一方で叙勲を喜ぶ人がいるからだろう。
(1930年生まれ。桐生市堤町二丁目)